あとがき
いやはや、いろいろなことがありました。すったもんだの連続でした。文章にしてしまえばたった1行。その1行の答えを得るためにどれほど悩んだことか。歯を食いしばってがんばった時期、地面をはいつくばってでも前に出ようとした時期、神と仏に頼んで立場を代わってもらいたかった時期など、いろいろな時期がありました。
今思い起こすとすべてが懐かしくなります。しかし、ここで終わったわけではありません。ビジネスという終わりのないチャレンジは、今後も一生続くことになるはずです。そう考えると、おのずから気持ちも引き締まり、やるぞという気持ちにかられます。
終わりのないチャレンジにおける当面のチャレンジは、在米日本人用シルクロードをつくることです。今、在米日本人は大きな二つの問題を抱えています。一つは限定された職場、そしてもう一つが生活のレベルアップの問題です。
言葉や習慣、学歴のため一般アメリカ社会に職を求めることのできない日本人は、どうしても生活の糧を日本人社会に求めることになりますが、その日本人社会では職種がかなり限られています。ということは、自分の才能を活かせる場所に限りがあるということです。人には向き不向きがあり、向いた仕事なら誰でもやる気が出て、工夫もできて、生き甲斐も得られます。しかし、不向きな仕事に従事すれば、生活のためだけの仕事になり、能力を発揮することなく、その芽を摘んでしまうことになるのです。より多くの職場の創造が急がれます。
次に、生活のレベルアップの件ですが、規模の小さな日系企業では、どうしてもアメリカ企業並みの福利厚生システムを提供できない恨みがあります。まずは、日系企業がもうかることが重要です。
これらの問題解決の対策として私がチャレンジしているのが、日本人社長をたくさん生み出すことです。日本人の会社が増えれば、それに比例して日本人の職場も増えるということです。「一旗会」はそのための重要な役割をになっています。一方、最低限必要なのは、今ある会社をつぶさないということです。日系の会社が一つつぶれれば、日本人の職場が一つ減るからです。もちろん「一旗会」の役割はそこにもあります。
しかし、もっと重要なことは、今やる気のあるひとりひとりが力をつけ、力をつけた仲間が力を合わせれば成功する確率が高くなり、成功者の続出は後続する日本人に勇気と希望を与えることができるということです。このための場、これこそが「一旗会」の役割になります。そして、その成功した日本人が全米に散在することにより、それらをつなげた線、すなわちシルクロードができて、その道をたどれば、すべての日本人は職を求めることも未来を創造することも実に簡単にできるようになるということです。これがシルクロード構想です。
人はいろいろな事件に遭遇することにより、自分の可能性を引き出すことができるようです。苦しいことやつらいこと、悲しいこと、だまされたこと、どうにもならない絶望とも思える事態、いろいろな試練があればこそ、私たちは自分を振るい立たせ、それらに堂々と立ち向かうことになります。だからこそ、前進も可能になっていくのです。その過程で私たちは知らず知らずのうちに力をつけていき、そして、知らず知らずのうちに私たちの夢に近づいているのです。
この本の元になった文章は、波瀾万丈の私の体験をアメリカでがんばる人々のお役に立てることができないだろうかという発想のもと、一旗会に参加したアメリカでがんばる日本人スモールビジネ経営者や、アメリカで新しい人生を切り開こうとしている日本人、そして、アメリカで起業を考えている多くの日本の方々への参考、励ましとして、折りあるごとに発表してきたものです。理論の集積でも教科書的発想でもなく、私の実体験とその体験から学んだ知恵を元に、がんばる経営者の参考になるように、経営について考えるためのヒントとして役立ててもらえたらという思いからまとめたものです。
たまたまそれをお読みいただいたベルエキップの高橋誠氏から、これはぜひ出版すべきだというありがたいお誘いがあり、そればかりか高橋氏はさっそく日本の出版社にコンタクトをとってくださいました。そして、私の文章をお読みいただいた光文社の編集の山中徹弥氏は、これは今日本が求めているメッセージだと判断し、無名の著者である私の原稿を真剣に検討していただき、編集長の丸山弘順氏のあたたかい励ましのもと、出版される運びになりました。三氏に対して心からお礼を申し上げたいと思います。
明治維新の前後、数多くの心ある人々が欧米に渡航し、そして、それぞれがいいものを日本に持ち帰り、おかげで日本は大発展を遂げることができました。今、日本では多くの日本人の方々が苦悩しています。その方々の必要とするものを日本に持ち帰る、そのような明治の先駆者の真似事の一端でもできればと思っていた矢先の朗報でした。私は実にラッキーな人間だと思います。そして、私のこの幸運が、その何億倍もの幸運として、日本の方々に味わっていただけたらと願っております。
日米ともに不況が叫ばれる今、何もしなければ何も起きません。あたってくだけろの気迫のもと、障害に立ち向かうからこそ道は開けていくのです。起業を考えながらその夢に未だにチャレンジしたことのない方、サラリーマンとしての生き方に疑問を持ちながら悶々とした日々を送っている方、マンネリ化のためビジネスが停滞している経営者の方、自分の活躍の場を求めている方、海外への飛躍を夢見る方、そのような方々の行動の起爆剤として、この本がお役に立つことを祈っております。
人には必ず出番があるものです。もしかしたら、その出番は今というタイミングではないでしょうか。今こそあなたが求められているのではないでしょうか。
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