競争することで力がつく。大事なのは、相手より優位な立場を維持すること
競争のない社会は進歩のない社会です。もちろん、経営者としては競争のないほうが楽なため、競争のない商品、競争のないサービス、競争のない業界を夢見る方が多いようです。しかし、どんなに競争がないように見えても、一度あなたが成功すれば、必ずあなたを模倣する人が現れ、好むと好まざるに関わらず、競争に巻き込まれる羽目になります。
競争する以上、必ず勝つ必要はありませんが、けっして負けてはなりません。競争が激しくなるとマーケットのサイズが大きくなり、負けない限り享受するパイの大きさも大きくなるからです。もちろん、勝つに越したことはありません。また、ノウハウやパテント(特許)があれば競争しなくてすむとお考えの方がいらっしゃいますが、そうは問屋が卸しませんので気をつけてください。
いい例がポラロイドカメラです。独特のパテントでインスタント写真マーケットを牛耳っていた同社は、類似品を出したコダック社をパテント侵害で訴え、その牙城を守ったように見えましたが、それからまもなく現れた1時間現像サービスによりマーケットを大幅に侵食され、とどめを刺すかのように現れたデジタルカメラにより、とうとう会社更正法手続きにまで追い込まれてしまいました。競争の怖さとその必然性を意識させてくれたいい例でした。
ビジネス社会でのし上がっていこうと思えば、よそと同じことをしていたのでは、あとからマーケットに参入する人間にはほとんどチャンスがありません。よそと違ったアプローチが不可欠です。その違いを何に置くかを見極めることが、スタートする前からあなたのビジネスの成否を決定してしまいます。
それでは、競争を有利に展開するにはどうしたらよいのでしょうか。そのあたりを見てみましょう。
1.競争の目的をはっきり把握
2.相手を明確にし、相手を分析する
3.相手の強みと弱みを把握したうえで、自分のビジネス展開策を練る
4.社内に競争意識を盛り上げ、力を結集し敵にあたる
5.自分が大きな損害を受けるような勝ち方はしないこと
6.けっして負けないこと
私がある業界に参入したとき、大手先発会社がガッチリと顧客を押さえていました。全米展開を視野に入れている私としては、どうしてもその業界に根をおろす必要があります。なんとか突破口を作らなければなりません。価格競争だけは初めからするつもりはありません。なぜなら、資金力のない人間がそのようなつまらない競争をすれば、つぶれるのは時間の問題だからです。違う種類の商品でのアプローチも、顧客の店内陳列スペースが100平方メートル前後なので、あまり新たな商品の売りこみをかけても効果は少ないようです。
考えた末に、同一商品や類似商品をうちの商品へ切り替えてもらうビジネスアプローチを実行することにしました。私の弱みは、いわずとしれた資金力とその業界の経験や実績がないことです。一方、強みは、行動力や顧客要望への抜群の適応力と、品質に定評のある日本商品を取り扱っているということです。熟考の結果、私は、誰もやっていない委託販売アプローチをすることに決めました。しかも、信用調査なしの条件で。
30日の掛買で大手から購入している小売店主に対して、「買掛金は今払わなくても、一ヶ月後には必ず払わなければならないはずです。あなたの店で商品が売れていようがいまいが。お金がもったいない話ですね。それよりは、売れた分の商品にだけ支払いしていった方が良いのではないでしょうか。しかも、売れてから支払いすればいいのです。まず私の商品でお金をもうけてください。もうかったら払ってください。こういう条件をあなたにオファーしたいと思いますが、あなたはどうなされますか」とセールストークしました。
世の中は不景気。スモールビジネスのオーナーは誰もが現金のありがたみを肌で感じている時期です。私は、次々と顧客の獲得に成功することができました。私の競争相手は、大手卸売業者です。彼らの取扱商品を一つずつ切り崩す作戦は、この委託販売アプローチで先端を開くことに成功したのです。相手に勝つ必要はなし。自分の目的が達成できれば私の勝ちです。それが競争というものです。
もう一つ例をあげてみましょう。私が弁当宅配サービスに進出したとき、一般レストラン以外にそれを専門とする会社が8社ほどありました。それぞれがそれぞれの顧客を持ち、なんとなく業界のすみわけや地域のすみわけができていました。そこで私はどのようなアプローチでこの業界に参入すべきかを考えました。
日系社会の人口はたかがしれています。そのたかがしれた人口のうち、弁当の愛用者の数はものすごく限られたものです。パイはものすごく小さなものでした。しかし、始めた以上それを軌道に乗せなければなりません。規模を拡大し、ビジネスとして採算の取れるサイズに持っていかなければなりません。そして、何よりも将来性を作っていかなければなりません。その方法とは? 私はいろいろ考えました。私のビジネスに必要なだけのパイの分け前を取るためには、パイの大きいことが条件です。そこで私は、パイを大きくすることを考えました。すなわち、弁当利用者を増やすことです。既存の業者が手をつけなかった領域への進出です。
私はさっそくこの問題に正面から取り組むことにしました。そのためのアプローチとして、二つの作戦をたてました。それぞれの業者の位置とその行動範囲を確認し、彼らがサービスをしていない地域を割り出しました。宅配サービスには経済効率があり、特に、ほとんどすべての業者は楽をしたいため、近場の既存の顧客だけを相手にしたビジネス展開をしていることに気づきました。しかも、特別に計画的なマーケティングを行っているところはなく、極端な話、その業者の隣に位置する顧客にも買ってもらえないような商売ばかりをしていました。
私は「これはいけるぞ」と感じました。調べれば調べるほど、「一つの地域をていねいにつぶしていけば、顧客はあちらこちらにいる」という確信が深まっていきました。既存業者のサービスが見落とされている地域、および既存業者のお膝元への徹底したアプローチ、これがマーケティングの一つの柱になりました。
もう一つのアプローチは、顧客の不満や欲望の発見です。そこでわかったことは、すべての業者が自分で作って自分で販売していたので、いつも味が同じで盛り付けも同じというように、食べる側にとっては代わり映えのしない弁当ばかりという弊害を見つけました。
レストランに出かけて食べるのと異なり、弁当を召し上がる方は、オフィスや自宅などで食べるので、場所の雰囲気などでごまかすことができません。また、弁当は冷めているのを食べるわけですから、あらゆる点で食べる楽しみ作りの工夫がなければなりません。かなりの業者はマンネリのためか、そのような工夫をしていないことがわかりました。
そこでいろいろ考えた末、それを克服する方法として私は駅弁の発想にたどりつきました。既存のいろいろなレストランに発注することにより、同じメニューでも味付けや盛り付けが違い、「これは○○レストラン製です」という楽しみを付け加えることにしました。おいしければぜひお店にお出かけくださいと、お店のプロモーションも目的にする弁当宅配サービス、それを会社の売りにすることを決めて、さっそくいろいろなレストランにこの話を持ちかけました。このレストランプロモーションアプローチは、既存の業者が抱えていた大量注文に対する処理能力の問題を解決することにもなり、プランとしては万全の体制が整いました。
各レストランへの条件は、発注分はすべて買い取り、支払いは同日現金払い。メニューは各店の特徴を前面に出すこと。このような条件に対して、ビジネスはスローだけど貴重な人材を手放したくないレストランや、新規オープンしたばかりでお店を宣伝したがっていたレストラン、ビジネスを飛躍させたがっていたレストランなど、多くの店が賛同してくれました。
私は、偏った味の問題を解決し、大きな数量注文に対しては数軒のレストランに仕事を分散することにより処理能力を確保し、そして何よりも、お客様には駅弁のように異なったレストランの弁当を毎日お届けすることができるようになりました。顧客から特に喜ばれたのは、レストラン同士の競争意識が内容充実をもたらしたことです。おかげで新たな弁当利用者があちらこちらに誕生し、業界のパイはどんどん大きくなり、競争会社からも、「射手園さんのおかげでお客が増えました」と感謝されるようになりました。私は誰かと勝ち負けの競争をすることなく、確実に顧客を確保し、ビジネスの確立と成長に成功し、そしてうれしいことに業界自体の発展に貢献できたのです。
競争で重要なことは、直接相手に勝つことではなく、ビジネス遂行上相手より優位な立場をどうやって確保することができるかであり、かつ、競争することによりどうやって自分に大きな力を蓄えていくかということです。
みなさんもぜひ競争を使ってどんどん成長してみてください。大きな仕事を達成しようと思えば、最終的には自分が大きな人間でなければならないのです。そのためには、自分の能力を目いっぱい引き出してくれる競争という手段を上手に駆使し、力をつけていくことをおすすめします。苦もなく勝って力をつけていくことはできません。負けそうな競争にチャレンジし、そこで初めて力をつけることができるのです。競争は実にありがたいものです。
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