『「スモールビジネス」成功のセオリー90!』より

自分の好きなこと、得意なこと、人が求めていること、人からよく頼まれること、これらがビジネスになる

 私は、スモールビジネスの支援団体である「一旗会」を主宰しているので、ビジネスを始めたいという方々から質問を受ける機会がよくあります
「ビジネスを始めたいのだけど、何から始めたらいいのかよくわからずに困っています。何を始めればいいのでしょうか?」という質問が最もよく聞かれる質問です。
お話を聞いてみると、家にいるのが退屈だからとか、お小遣いが必要だから、勤めが面白くないから、レイオフされたから、という方が大半です。こういう方々は、ビジネスをされると必ず失敗しますので、やめておいた方がいいと思います。 
 勤め人と起業家には、心構え、知識、行動において天と地ほどの差があります。与えられた仕事を立派にこなし、9時から5時まで真面目に働き、努力すれば、サラリーマン社会ではうまくいくかもしれませんが、ビジネスの社会では通用しません。
ビジネスにはお金がかかります。ビジネスには競争相手がいます。ビジネスは努力しただけでは意味がありません。工夫して結果を出して、初めてビジネスといえるのです。始業時間と終業時間のないのがビジネスです。会社の仕事を家に持ちこむことなどしょっちゅうです。定期昇給やボーナス、定期昇進などもありません。自分で稼ぎ出さなければなりません。ビジネスとはこのようにとても大変な仕事です。
それでも、あなたはビジネスにチャレンジしてみたいですか?
 次によく聞かれる質問は「こういうビジネスが流行っているそうですが、うまくいくものなのでしょうか?」といったものです。
投資相談ならそれなりの答えがありますが、ご自分でビジネスを始めるということなら、困ってしまう質問です。仕方がないので「あなたはそのような仕事の経験がありますか?」と聞くことにしています。通常、全くないのが普通です。そこで「なぜそのような仕事に興味があるのですか?」と聞くと、「うまくいきそうだから」とか「もうかりそうだから」といった答え。これではとてもお話になりません。将来性のあるビジネスを始めれば、自分にも将来があるのではといった気持ちはよくわかりますが、ビジネスに将来性のあることと、その方の将来性とは全く無関係です。
 そのほかによく聞かれるのは、「こういうビジネスを始めたいのですが、うまくいくためにはどうすればよいのでしょうか?」といった質問です。私がホッとするのは、このような質問をされたときです。実のところ、どんな仕事を始めるかはどうでもいいことなのです。どう経営していくかが成功、失敗を決定してしまうからです。
 どんな仕事であっても成功する人がいます。その人たちは、失敗する人たちとは一味違うやり方をしているから、成功すべくして成功するのです。
 しかし、そうはいっても、成功のチャンスを増やす仕事の選択方法はあります。それは、自分の好きなこと、得意なこと、人が求めること、人からよく頼まれることをビジネスにするというやり方です。その理由は簡単です。少々の苦労があっても、自分の好きなことや得意なこと、他人に喜んでもらえることなら、本人のがんばりがきくからです。がんばる程度が高ければ、それだけ成功するチャンスが増える。全く当たり前の話です。ですから、どうしても成功したい方は、それらをビジネスにすることをおすすめします。
 私のやり方は、人から頼まれたことは二つ返事で引き受け、その頼まれ仕事の中から直感的にビジネスになりそうなものをピックアップするという方法です。例えば、園芸業界や、カーウォッシュ業界、医療業界へ進出したきっかけは、こんな商品を探してくれないかと人から頼まれたことでした。たった一つの要望をきっかけに始めた仕事が、いつしかその業界全体をカバーするビジネスに変わっていったため、成功することができました。
 人が求めること、人からよく頼まれることは何かという視点で身近なところを見回せば、ビジネスチャンスはいくらでも転がっています。
ここで私が人助けのつもりで始めたことが、ビジネスに結びついた例を挙げてみましょう。
 1998年の1月末、私は自分の住まいの近くに奇妙なハンバーガースタンドを見つけました。韓国人街の隅にあり、どちらかというとラテン系の人たちが多い地域にもかかわらず、手書きで「Udon」と書いた紙が貼ってあるのです。韓国人もラテン系の地域で面白いアプローチをするものだなと印象に残っていました。
 ある寒い日に、私は帰り道にウドンが食べたくなり、その店に立ち寄ることにしました。ウドンを注文すると窓口に日本人が出てきました。
「なんでこんなところに店を開けているの?」と私は思わず聞いてしまいました。
相手も私が日本人であることがわかり、中に案内されて調理場に通してもらったあと、ビールをごちそうになりながら彼の話を聞きました。ハンバーガースタンドの全米展開を始めるために、3ヶ月ほど前からこの店を始めたとのこと。いつ通っても客の姿を見たことがない私は、率直に売り上げを聞いてみました。一日80ドルとのことでした。
「家賃は?」
「1200ドルです」
「あなた、つぶれるよ」
「ええ、それで困っているところです」
「何かをして日銭を稼がなければ突破口が開けないよ」
「どう工夫しても客が来ないんです」
「あなた、ハンバーグ作り以外に何かできないの?」
「弁当は作れるのですが、それは作りたくないので」
「どうして?」と聞くと、「どうしても作りたくない」の一点張り。
「あなた、弁当を作りなさい。私が注文を取ってきてあげるから」
「どうしても弁当だけは作りたくありません」
 何らかの理由で自分の殻に閉じこもろうとする彼。彼がビジネスで成功するためには、過去にこだわる姿勢を変えなければなりません。今は難しいことは考えず、現状打破が必要なとき。そう判断した私は、
「じゃあ、こうしよう。私のカーウォッシュ卸の仕事は、2月いっぱいは天気に左右されるので手が抜けるから、1ヶ月だけ手伝うから弁当を作ってちょうだい。その代わり3月からは近所のアルバイトを雇って、私の作ったお客様を必ず面倒を見るという条件で。 売値がこれで、私のコッミッションはこれだけもらうから、あなたへの支払いはこれでいこう」
 ということで、私は翌日、簡単な印刷物を用意して、さっそく彼の両隣りやご近所さんはもちろん、心当たりの人たちを回り、弁当の注文をとって歩き出しました。まず一個、そしてまた一個。彼の店に行ったり来たりしての、発注、ピックアップの繰り返しが始まりました。
彼の弁当作りはとても手慣れたものでした。後日知ったことですが、実は彼はある弁当会社で18年間社長を務めた人間だったのです。ちょうどこのころ、彼が以前働いていた会社から彼の所で働きたいという人間がやってきました。手土産に今までの会社の顧客だった旅行会社の注文を取ってきたため、彼のビジネスは急激に忙しくなりだしました。
 そして3月間近になり、引継ぎの確認をしたところ、「射手さん、悪いけれどできないや」との冷たい発言。旅行会社からの大口注文に忙しく、小さな宅配の注文は相手にしたくないようでした。仕方がないので店主名で、「コミュニティサービスとして始めた弁当宅配サービスは諸般の事情により中止のやむなきにいたりました」というチラシを用意して、ご利用いただいたお客様に配って歩いたところ、「中止しないでくれ」との希望が殺到しました。彼にその旨を伝えても、「悪いけどできない」の一点張り。
しょうがないので、私は他のレストランを探すことことにして、その地区にある2軒のお店に弁当作りをお願いしに行きました。顔なじみの一軒は、自分でも弁当作りと宅配を行っていたので、「考えさせてください」と消極的な返事。
見ず知らずで飛び込んだ2軒目の店のオーナーは、「おじいちゃん、おばあちゃんが弁当がなくて困っているので、何とかしていただけないでしょうか」という私の願いを聞いて、「そういう事情なら協力しましょう」と申し出てくれました。
 やれやれと思った矢先に、「ところでどなたがお客に配達するのですか?」との質問。そのようなことは考えてもいなかった私は、一瞬答えに窮しましたが、いまほどの注文量なら自分でもなんとか時間を作れるだろうと軽く考え、「私が配達しますのでよろしく」と答えてしまいました。この瞬間、私は自分で意図も計画もしていなかった弁当宅配サービスビジネスに乗り出さざるを得ない破目になってしまったのです。人助けのつもりで始めたことが、その相手にほったらかされたために、自分で責任を取らざるを得なくなったというのが本当のところです。
 この弁当配達のビジネスもおかげさまで5年目を迎えております。
 ビジネスチャンスはどこに転がっているかわかりません。自分の好きなこと、得意なこと、人が求めること、人から良く頼まれること、これらこそあなたがビジネスを立ち上げる最高の突破口です。もしチャンスと思えるビジネスに遭遇したならば、必ず立ち上げる、必ず成功するとの気迫のもと、工夫と努力を重ね、そのチャンスを物にするようにしてください。遠くを探さず、足元にあるチャンス、それをけっして見逃さない心構え、それをお忘れなく。

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